感想日記 夜明けの青

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感想「マイレージ、マイライフ」宙ぶらりんでいることの楽しさと寂しさ

 今まで、勘違いしていたのだけど、マイレージマイライフって、リストラ宣告人がリストラされる話じゃなかった。中学生の頃、深夜にやっていたのは覚えているけれど、最後まで見た気で、どうも途中で眠ってしまっていたらしい。改めて、通しで見て、ああ、いい映画だなとしんみりしてます。

 

 今作は2009年の作品ですけれど、今、見返したことで、無知なりにアメリカの経済状況を察することが出来て、かなり楽しかったですね。当時、大不況のアメリカでリストラを宣告すること、デトロイトへ行って、そこの失業者は手ごわいなんて話をする場面の意味なんて、多分、中学生の頃ではまったく分からなかったので。

 で、この作品の主人公はジョージクルーニー演じる、ライアンですが、裏の主人公ともいえるのは、このリストラを宣告される人たちなんだな、と感じました。そして、その宙ぶらりんの人たちは、主人公であるライアンや、新人のナタリー、そしてライアンの恋人であるアレックスもまた、含んだ表現なんですね。

 原題が up in the air というらしいのですが、これはスタッフロール中に流れる、とある失業者が作った曲を、映画に使ってほしいと送って来たものから、どうも取ったんじゃないかな、と思います。どこかで明言されてるわけじゃないですけど。

 

 さて「マイレージ、マイライフ」ですが、仕事や恋愛、家族を通して、描き出していくのは、一人でいること、孤独ではないこととは何か、ということです。それがまさに、up in the air 宙ぶらりんと表現される訳です。映画の主役である三人は、出張に次ぐ出張で、家に帰りつく暇もありません。飛行機に乗り、空の上を飛び回る。そして、地面に降り立ったその足で何をするのかといえば、まるで人を孤独にするためだけに、仕事を奪い、素知らぬ顔で社会に放り出します。

 そして、そんな仕事をしているライアンは非常に孤独です。孤独というと少しネガティブなニュアンスになってしまいますが、彼は一人でも平気な人です。話し相手には困らないと公言し、どこかへ行けば、夜を共にする女性を見つけるのにも、そう苦労はしません。この物語は、何か欠けているものを見つけ、それを手に入れるという形をしている訳ではないのです。ライアンはいつも一人であるまま、時にナタリーと共に旅をし、アレックスと妹の結婚式に出席しますが、最後に、彼はもう一度、空港のいつもの場所へ帰ってきます。彼は自分の位置を再確認し、そして、一人であるがまま、どこへでも旅立っていける場所へ立ち、物語は終わります。

 ライアンは色々な迂回路を通り、初めに自分が立っていた場所へ戻ってくるわけですが、その回り道した景色の中で、様々に模様を変えていく人間の生き方というのは、実に多様で、そしてどれも嘘のない、それぞれの在り方だったんだな、とぼくは思います。ライアンは沢山の価値観に出会い、それでもどこかの極へ振れることはなく、今まで自分が在ったように、最初の地点へ戻ってくるのですが、そこは初めとはやはり変わってしまった場所です。例えば、目標であった1000万マイル、いるのかいないのか分からなかった家族との関係、仕事ですらネットを経由したやり方から、出張の日々へ帰ってくるのです。

 

 一人でいること、孤独でいることは悪いことでしょうか?

 家族や恋人、友人関係など、煩わしいことに頭を悩ませていませんか?

 一人でいることと、誰かと寄り添うことは一概に良い悪いと語ることは出来ません。アレックスのように家族をアンカーにすることで、アメリカ中を飛び回り、精力的に仕事ができるということもあるでしょう。また、ライアンの妹夫妻はそれぞれを機長、副機長となぞらえて、これからの人生を旅立っていきます。

 例え、一人でいても、どこか新しい場所を目指すことが難しいこともあります。また家族がいても、いつだって好きなこと、やりたいことを始められます。

 宙ぶらりんでいることは、きっとそういうことです。一人でも、家族といても、宙ぶらりんでいる時はあります。でも、それは悪いことではありません。ライアンとナタリーは失業を宣告する時、必ずこう言います。これはチャンスなんだ、と。これから宙ぶらりんになる人たちへ向けた言葉、確かに一人でいることは寂しく、孤独です。だけど家族とばかり、べったり生活していれば、息も詰まります。

 宙ぶらりんでいるからこそ、いい。人と距離を取り、ゆっくり空気を吸いましょう。それに二人でだって、宙ぶらりんでいられます。三人でも、四人でも。

 この映画から感じるのは、旅行前に鞄に荷物を詰め込むときの気持ちと同じです。これからが楽しみで仕方なく、それと同じくらい不安。何が起こるか分からない。失敗もあるかもしれないけど、その時には一緒に宙ぶらりんになってくれる人がいる。それだけでいいんだと思います。

 

ここ一月、読書が捗らなくて、少し自罰的に鬱になっていたのですけど、本が読めないなら映画を見ればいいじゃない、と何のために毎月ネットフリックスにお金を払っているのか、気付けて、本当に良かったです。

マイレージ、マイライフ、」本当にいい映画でした。映画を一つ見るだけで、どうしてこんなに世界が満ち足りたものに感じるのか、まったく訳が分からないですね。でも、そこはかとなくうれしい。

しかし、文章も全く支離滅裂ですね。反省。

 

寒さも本格的な十一月の夜中