感想日記 夜明けの青

主に小説・アニメ・マンガの感想、日記、雑感 誰かの役には立ちません @madderred100

【個人用メモ】最近見たもの

映画 39

「ハーフオブイット 面白いのはこれから」

 どこかで感想を書いた覚えがあるのに、どこにも見つからなくて、ちょっと困惑してます。プラトンの「饗宴」で語られる、人間はもともと完全な存在であり、それが神の怒りによって、二つに分けられ、以来、運命の相手を探しさまよっているという寓話に真っ向から挑んで、そして勝利を掴み取った作品。

 ぼくが受け取ったイメージとしては、人間を構成する要素はほんとうにバラバラで、小さな欠片をたくさんの人から受け取り、つぎはぎに繋ぎ合わせて、自分を形作っているものなので、運命の相手はたった一人ではなく、そうやって分かち合える欠片を持つもの同士なら、何人でも運命の相手になれる、という解釈なのかなと。

 温泉に入りに行くシーンは、キーショットで、本当にすばらしいのでそのシーンだけでも見てほしい。「饗宴」のほうで、人間は二人で一つだった。顔は二つ、手足は四つずつという話があるのだけど、それを象徴するカットですから、一見の価値ありです。

 

レッド・ドラゴン

 車いすが炎上しながら、坂を下るシーンが好き。

 久しぶりに見たら、ドラゴンのタトゥーをひけらかすシーンがギャグにしか見えなくて、困った。殺人者の扱いも、この二十年でだいぶ変わって、精神に異常があるから、みたいな簡単な理解はできないな、と。もちろんこの映画がそうという訳ではなくて、解釈の余地はあるのですけど、20年代のエンタメではどう描いていくのがいいのかな、みたいな感じです。

 

「ベルベット・バズソー 血塗られたギャラリー」

ナイトクローラー」の監督と聞いて、見ました。ホラー映画としてのフォーマットが、何だか無粋な気がしながら、見てました。もう少し、美術商の世界が見れると思っていたので、その期待分もあったのでしょうけど。

 ただ、実際に作品を作る芸術家に被害が及んでいない辺りを見ると、美術業界に対する皮肉というか、寓話というか、そういう作品なのかな、と思いました。

 

「13th ー憲法修正第13条ー」

 アメリカの人権侵害について、南北戦争奴隷制がなくなり、その後もジム・クロウ法などで制限されてきた黒人の人権が公民権運動を経て、回復する、という程度の理解だったのですが、今作を見て、おおまかな地図が手に入った感じです。

 ターニングポイントはやっぱり南北戦争公民権運動なのですが、その二つで、人権を制限するアメリカ政府の(あるいは、そこに焦点を当てた大統領選の)戦略が変わっていくのが、示されていて、面白かったです。

 まず南北戦争によって、南部の奴隷制が否定される訳ですが、では約400万いた奴隷と、それに依存していた経済体制が、その後、どのように推移したのか、は自分は全く知りませんでした。とうぜん、唐突に奴隷がいなくなれば、農場は立ち行かなくなり、また元奴隷も仕事がなく、行き場を失うことになります。

 そこで重要になるのが、憲法修正第13条。ここでは奴隷制を否定しながらも、犯罪者はその限りではない、という注釈が点いています。当時の南部の白人たちはそれを利用し、黒人を大量に逮捕、投獄することで労働力を確保します。また、映画「国民の創生」で描かれた黒人像が後押しする形で、黒人=犯罪者というイメージが付いてしまいました。

 それを少なからず変えたのが、70年代(あってます?)の公民権運動。逮捕されることを名誉とした、という解説が非常に興味深かったです。そして、実際に「グローリー 明日への行進」で描かれたように、団結によって、公民権の回復に繋がっていきます。

 が、それと同じ時期に、第二次世界大戦直後のベビーブーム世代による犯罪率の増加が起こり、公民権運動に反対する勢力によって、それが黒人、ヒッピー、LGBTのデモに関連するものだと結び付けられてしまいます。

 この犯罪率の増加は、アメリカ全土の重要な課題と位置付けられ、ニクソンレーガンクリントンの三人によって、刑罰の重罰化が進み、それによって、アメリカ国内の刑務所が増加します。ここで、話は南北戦争後のアメリカとリンクし、国内の重要な産業となった刑務産業界は、他の大企業も参加するロビー活動団体によって、囲い込まれていきます。

 そうして、現在では刑務所ビジネスを利用した搾取が行われている、というあたりで映画は終わります。

 構造的な問題を抱えた上で、黒人差別がある、というが今回分かって、だいぶ興味深かったです。

 

「コードネームプリンス」

 ジョンウィックと48時間を合わせたような映画。ブルースウィリスが敵役で出る映画は、駄作というジンクスが自分の中に生まれつつある。

 

「ブレスラウの凶禍」

 「セブン」とか「ハンニバル」みたいな猟奇殺人をモチーフにしたサスペンスと思いきや、後半になって、重重の殺伐百合の沼に突き落とされて、驚いた。復讐の仕方を教えてあげたでしょう、というセリフはかなり痺れましたね。自分は勝手に、こういう重いとか思考を継承するのを、感情教育と名付けているんですが、いまだヴァレリーの「感情教育」の原典にはあたれていないので、いつか読みたいと思ってます。

 

読書 54

「謎の放課後 学校のミステリー」編 大森望

学園ミステリを集めたアンソロジーブックオフで安かったので買いました。最後の猩々の話が一番好きで、やっぱり幻想小説みたいなのが好きなんだな、と実感しました。あとは、読んだの少し前なので忘れました。

アニメ 24