感想日記 夜明けの青

主に小説・アニメ・マンガの感想、日記、雑感 誰かの役には立ちません @madderred100

【個人用メモ】最近見たもの

小説が書けないアイツに書かせる方法 著アサウラ

 以下、ネタバレあらすじ。

 勃起不全の男子高校生が実体験を小説にしたところ、フランス書院的な出版社の新人賞を受賞、その作品が話題となるものの、勃起不全は改善せず、次回作にも着手できずにいた。そこに、不審な女子大生がやってきて、小説を書けと脅してくる。書かなければ、正体をばらすと言って。彼女が見せたプロットは触手に犯された乙女が純愛と快楽の間で揺れ動くというものだった。そのプロットに勃起不全改善の兆しを感じた主人公は、脅しに屈する振りをしつつ、その原因を調べることに。

 だが、原因の分からないまま、書き続けた小説はクライマックスで急ブレーキがかかる。プロットを監修しているヒロインのダメ出しが止まらないのだった。不思議に思った主人公はヒロインについて調べていくうちに、彼女が同じ新人賞の大賞受賞者であったことを知る。と同時に、ヒロインの小説を読んだ主人公の勃起不全が解消する。今度は主人公がヒロインを脅し、小説を書かせることに。

 主人公とヒロインは二人三脚で小説を書き進めていく。だが、小説の出来を左右するクライマックス、快楽の象徴である触手と対を成す、婚約者からのキスがどうしても書けない。経験こそが創作の糧である、というヒロインにたいし、主人公は自らの身を投げ出すことを決意する。二人はキスをし、小説は完成する。直後、消えたヒロインを追い、主人公は軽井沢へ。二人は書店へ行き、出版された小説が売れるのを見る。主人公はうれしそうなヒロインの横顔を眺め、そっとその場から立ち去った。

 それからしばらくの間をおいて、主人公は相変わらず、小説が書けずに悩んでいた。そこでヒロインがやってきて、脅迫の続きを述べる。

「君は小説を書くの。この私、一之瀬琥珀のために、小説を……」

 

 創作についての創作、それに絡めたヒロインとの恋愛模様の扱いが上手いという感想。フーディにパーカーとルビが振ってあったのが印象に残った。面白く読んだのだけど、うまく吸収できない。どこが面白かったか、聞かれるとよく分からない。なんか、全編にわたって期待感があったような気がする。それと、小説が積み上げてきたものがどういう反応で受け入れられるのか、をしっかり作中で書かなきゃいけないんだな、ということを思った。特に、ヒロインが書いた小説がどう受容されたか、ということをしっかり書き切っている。それを読むことで、読者は安心して、ハッピーエンドだと確信するのかな?

 

嘘つき姫 著坂崎かおる

あーちゃんはかあいそうでかあいい 著坂崎かおる

 二つまとめて坂崎かおる論的なの書きたい。

 1996年の羽生善治に対する全プロ棋士の気分であり、現時点での藤井聡太に対する渡辺明のような気分。ネット上の公募賞を総なめしつつある坂崎かおる氏について、まじめに分析しないといけないでしょ、という。

 

 

エーミールと探偵たち 著エーリヒ・ケストナー

 ノイシュタットに住む少年、エーミールは母一人子一人で貧しいながらも幸福に暮らしている。ある日、ベルリンの親戚の元へ遊びに行くことになったエーミールは、支払いの滞っていた仕送りを持っていくことになる。母が大変な思いをして稼いだお金を、きちんと送り届けることを約束したエーミールだったが、ちょっとの居眠りの隙に列車に乗り合わせた山高帽の男に、お金を入れた封筒を盗まれてしまう。

 彼を追いかけ、ベルリンの街を右往左往しているうち、エーミールは地元の餓鬼大将であるグスタフに出会う。事の次第を説明すると、グスタフはお金を取り返すのを手伝ってくれることに。また彼の案内で、地元の少年たちが集まり、作戦会議を開く。連絡係、見張り、待機メンバーなど役割を割り振られた少年たちは、山高帽の男を追いかける。そうこうしているうちに噂を聞きつけた少年たちが集まってきて、追い回された男はついに銀行へ入って、盗んだお金を両替しようと試みる。

 そこへ、エーミールたちが突撃し、すんでのところでそのお金がエーミールのものであると証明することに成功し、ぼろを出した男は逮捕される。警察署で事情を説明していると、記者がやってきて、エーミールたちに取材を始めた。なんと、山高帽の男は賞金首の銀行強盗だったのだ。新聞の一面を飾ったエーミールは、手に入れた賞金で母親をベルリンへ招待する。家族が揃い、口々に今回の事件について、意見を述べる。そんななか、おばあちゃんが一言。

「お金は郵便為替で送ること」

 

 「飛ぶ教室」があまりに面白かったので、ケストナーを追いかけてみることにした。「ふたりのロッテ」が次。あとは図書館に行って、評論とかを借りてこようかな。

 作品については、やっぱり少年が集まって組織を運営するあたりがすごく面白い。飛ぶ教室でも他校との戦争の場面とかめちゃくちゃ面白かったし。キャラが立っているので、複数人モブがでてきても混乱せずに読めるし、立案された作戦が理にかなっているように見えるので、納得感がある。あと、小説が書けないアイツに書かせる方法のところでも書いたけれど、事の顛末が作中でどのように受け止められたのかを書くのって、すごく重要なことなんだなと思った。特に、この作品は児童文学として書かれているから、おそらくは物語の快楽に忠実なはずで、読者を盛り上げるには登場人物が報われるべきなんだろうな。