感想「マネーボール」 復讐からの解放
ブラッドピットはこういう役をやると、本当に輝きますね!
まず初めに、2001年のア・リーグ地区大会決勝で、敗退するシーンから始まり、今作の主人公である、アスレチックスのGMビリービーンの過去、そして、マネーボール理論を操る、眼鏡の野球オタク、ピーターと出会うまでの一連のたたみかけが、非常に面白く、引き込まれました。
統計を重視するビリーの考え方は、
・スカウト(直感・経験)の全否定のメソッド
・旧来の価値での、使えない選手の否定
・ジャイアントキリング(金のないチームが、金のあるチームを負かす)
という観点に立っていることが、映画を見ていると分かります。そして、それらがビリーの苦い過去から来ていることも。
つまり、マネーボールという映画は、スカウトに人生を破壊された男の、球界に対する復讐劇なのです。
ビリーの野球に対する期待や失望は、20連勝のかかった試合で、彼のジンクスが発動してしまうシーンに集約されています。ジンクスは映画内で明言はされていないのですが、恐らく、彼がスタジアムにいると試合に勝てない、といったものでしょう。
ネタバレになりますが、ア・リーグの制覇を果たせなかったアスレチックスと、ビリーの物語は、はっきり言って、20連勝を果たすシーンがクライマックスです。そして、なぜ、このシーンがクライマックスなのかというと、このシーンでビリーにかかった呪いが解けるからです。
では、呪いとは何か。それは球界に復讐したいという、ビリーの野望です。球界を変えたい、そして恐らくは、今の自分を作った球界の奴らを見返してやりたい、という気持ちで、アスレチックスにいたビリーを、マネーボール理論が救う、彼が拾ってきた、再起不能と判断された元キャッチャーが彼にその答えを見せつける。
そのために、このシーンは今作のクライマックスなのです。
とはいえ、そのことにビリーが気付くのは、もう少し後になります。
シーズン後、レッドソックスから破格の値段でオファーが来ると、彼は悩みます。そこへ、ピーターがやってきて、ある映像を見せるのです。
鈍足のバッターがヒットを打ち、普段、足を進めない二塁に走ろうとしている映像です。彼は、一塁を踏んだ後、こけてしまい、一塁へ引き返そうとするのですが、彼が打ったボールは、ホームランだったのです。
自分ではダメだと思っていても、思いがけない結果が訪れることがある。価値は最後まで分からない。
ビリーは結果として、球界を変えました。マネーボール理論を取り入れたレッドソックスは二年でリーグ優勝を果たし、ビリーは上記のキャッチャーの話から、その事実に思い至ります。
ラストに流れる、ビリーの娘の歌は、全ての清算を終えたビリーの新たな旅立ちの歌なのです。
はっきり言って、支離滅裂ですが。八月の夜