感想日記 夜明けの青

主に小説・アニメ・マンガの感想、日記、雑感 誰かの役には立ちません @madderred100

「短い」なら「短い」なりの面白さ

noteで投稿したものの転載です。小説を読んでもらうための宣伝を兼ねているので、こちらにも投稿しておきます。

 

 ネットの発達により、表現することのハードルが下がってきている、という話はぼくが繰り返すまでもなく、多数生産されるコンテンツの中で、散々に話されていることではあります。
 一方で、多くのクリエイターがひしめくネットの海で、いかに自分の作品を見てもらえるのか、というのは大きな話題の一つです。簡単にコンテンツに接続できる現在、既存の作品(長い審査の過程を経て、出版・放送されるメディア作品)とは違った面白さが、ネット上のコンテンツには必要とされているということも、ぼくが語るまでもないことです。


 では、それは一体何なのか。
 今回は、ぼくが一月ほどかけて、noteに連載していた作品「屋上幽霊とユリの花」が完成した記念、反省、宣伝を兼ねて、考えていたことを書いていきたいと思っています。

ネットの時代のリーダビリティ

 例えば、Youtube・なろう小説など、ネット上のコンテンツは短さが非常に重要だとされていて、おおまかに、受ける要素というものをまとめるとすると、

 短い時間で、テンポよく、沢山のことを、毎日更新、スキマの時間にさらっと見れる。

 という具合になると思います。ここで言われているのは、興味を引くためのフックを多数用意すること、そして、受け手を呼び込む際のコストを低くする、つまりワンクリックを躊躇わせないこと、の二点が非常に重要だと分かります。
 テンポや流れをよくすることは、興味を引くフックを増やすことであり、コストを低くすることは、動画であるなら再生時間、文章ならば文字数を小さくすることです。そして、それはそのままスキマ時間に見れるということに直結します。

 さて、そんなことは分かっているよ、という人はかなり沢山いるはずです。こんなことは古今東西、語り尽くされた感がありますからね。
 では、これを小説に適用する際に、どのような手段があるのか。今回は、ぼくの自作の宣伝を兼ねていますので、そこで実践したことを書いていきます。

 

文章と物語、俺たちの明日はどっちだ

 まず、小説において、興味を持ってもらうための道具は二つ。
 それは構成(物語)と文章です。当然ですね。
 何を書くのか、どう書くのかというのはこれまでも、これからも書き手を大いに悩ませていくでしょう。が、この際、それはどうでもいい。今回は、この文章を書くにあたって、切っても切れない両輪をどのように魅せていくのか、しかも限られた短い紙面の中で、という話なのですから。

 ぼくはnoteに小説を投稿を始めた際、趣向を凝らした文章で読者を呼び込もうと作戦を立てました。また、その際の掌編小説は毎日、手慰みというか、文章の練習というか、で書いていたものですから、物語を作ろうという意識は全くありませんでした。

 

note.mu
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 しかし、こういった方法で読者を呼び込むことは難しい。なぜなら、ある一作を読んでくれた方が、次もまた読んでくれるかというと、非常に厳しいからです。というのも、文章に凝った作品を読むということは、その文章に惹かれたからこそ、読んだのであって、作品ごとに文体を変えて、多数の作品を投稿するのでは、固定的な読者の期待は望めません。勿論、より良い作品をいくつでも投稿できるというなら別ですが、ぼくには難しかった。
 やるからにはたくさんの人に見てほしいですからね。

 ここで注意しておきたいのは、文章によって、人を引き付けることは可能であるし、非常に強い武器ではあるが、その興味の持続性は薄いのではないか、ということです。
 さて、それでぼくは次の作戦を考えました。もうお分かりでしょうが、そう、構成(物語)を作ることです。
 とはいえ、物語を作るといっても簡単ではありませんし、ただ起承転結を守って、散漫に連載をしていたのでは、読者も集まりません。なにより、構成を考えようと思った、その発端が定期的な読者を獲得するというものでし たから。

 では、どうするのか。
 ・一話を面白く、読み切ってもらうこと。
 ・読み終わった時点で、次を読みたいと思ってもらうこと。

 非常に基本的なことですが、この二点を守れなければ、作品を読んでもらうことは出来ません。ぼくはこの二つを念頭に「屋上幽霊」を書き始めました。嘘です。初めは漠然と書き始め、段々と書いていく内、また読まれていく内に意識せざるを得なくなりました。

構成の妙って何ですか?

 ぼくはまず初めに、情報を小出しにしました。これは非常に安易な手法で、簡単に話を進め、引きを作ることが出来ます。話題を途中でぶつ切りにして、切った分を次回へ回す。序盤である10話ほどまでは、そのやり方で書いていましたが、その手法は、情報の少ない冒頭で、ある程度能動的に作品へ興味を持ってくれる間しか、効果を発揮しませんでした。とはいえ、今回はキャンパスノート一枚分(ぼくは手書き派なので)を一話分と決めて書いたため、紙面に収めるためには、このくらいの構成の方が文量が少なく済んで、助かりました。次に書く、構成を重ねるやり方では、ノート一枚分ではなかなか収まらない文章の量になり、いかに話を前に進めるかとの戦いで、登場人物たちの心情には、中々踏み込めませんでした。これの解決法もまた、後述します。

 次に、話をぶつ切りにするやり方の克服として、情報量を増やすこと。つまり、以前よりも話を前に前に進めていくやり方を試しました。これはネットのどこかで見たものですが、話を起承転結ではなく、

起・承・転・結・起・転・結

 と組み合わせることで、ある種の話のダレを失くすことが出来ます。このやり方は、ネギま赤松健さんや、ジブリ宮崎駿監督などが得意としているようです。一度落着させた話から、もう一度話を立ち上げる。これは本作でいえば、15話ほどから意識的に書いていましたが、その通りに出来ていない話数も多々あります。単純にぼくの力量不足ですが。

 現代では読者の物語リテラシーが非常に高まっていて、起承転結、程度では、度肝を抜く、というようなことは難しくなっていると思います。また書く意識としても、三幕構成よりも気が引き締まるので、頭の片隅に置いておくだけでも、効用があるんではないかと思います。まあ、簡単に言うと、テンポが良くなるんですね。

情報不足を補うための多視点の導入

 そして、先述しましたが、短い紙面(比喩です)で構成を増やした結果、読者を作品へ引きずり込むための、大切な武器、感情移入、またそこに導くための心理描写というものが、中々書き込めません。登場人物がとある出来事に対して、どのように感じたかというのは、次のアクションを決める際、またそのリアリティを考える時に非常に重要になります。下手な心理描写は読者の興を削いでしまいますが、かといって、まったく描写しないことには小説の中のアクションが薄っぺらになってしまいます。(ぼくが忸怩たる思いを抱いているのが27話ですが、ここでは話は進まない、心理描写は適当、何を書きたいのか、よく分からないと悪いことずくめです。幕間の話を書きたかったのですが、結果、テンポを悪くしています。閑話休題)

 その心理描写不足を解消するため、「屋上幽霊」では意識的に他視点を導入しています。主要な登場人物は一人を除いて、全員が一人称で何やらを語っており、またそれぞれに各々の事情を語らせることで、スムーズに話を進めることが出来ました。
 そして、一人称で新たな人物に語らせるというは、出版されるような小説では忌避されるようなやり方です。長い一冊の小説においては、そのやりかたでは却って、テンポが悪くなるからです。他視点の作品というものは、視点が増える分、単純に話の進みが二倍遅くなります。ですが、今回はネット上の連載小説。これが逆に武器になったのではないか、とぼくは考えています。というのも、連載が長くなるほど、新しい読者というのは付きにくいものです。特に前の話で引きを作り、その答えを書くような話は、問いを知らない分、新規の方にはとっつきにくいですから。

 ですが、一人称で登場人物のリアクションを書くとなると、前回までの話を読んでいた読者には、このキャラクターはこんなことを考えていたのか、と知る機会になり、また新しい読者には、何が彼をこう思わせたのか、というフックになります。心情をメインに書き込むというのも、状況理解の追い付いていない新規読者には、入り込みやすい要素ではないかなとも思います。

 

 と、おおまかにそんな二つのことを考えながら、書いた小説でしたが、全体的には、自分の拙さが目立った作品だったなと思います。時間のなさに追われ、書き上げたものを推敲もせずに投稿したり、構成を考えながらだったために、容子さんの伏線などほとんど無いようなもので、唐突に過ぎます。
 けれど、なぜ書き上げられたか、といえば、それはやはり読んでくれる方がいてくれたから、ではないかと思います。「屋上幽霊」を書き始めてから、フォローを頂いたり、拙い小説なりにスキが付くなど、誰かが読んでくれているんだ、という意識がどれだけぼくを勇気づけてくれたことか、分かりません。この場を借りて、感謝を述べたいと思います。
 本当にありがとうございました。

 さて、今記事を書いた目的は、最初に述べたように自分の作品の宣伝でした。もう一つ、裏の目的としては、今まで読んでくれた方に感謝したいと思っていましたが、それも叶いましたので、満を持して、この長い記事を読んでくださった方に、恥も外聞もなく、自作の宣伝をしたいと思います。

 

note.mu

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ぜひ、読んでみてください。
よろしくお願いします。