感想日記 夜明けの青

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感想「世界史としての日本史」半藤一利×出口治明 視点を切り替えることの重要性

 

世界史としての日本史 (小学館新書)
 

 説明不要のお二人の対談本。タイトルにあるように、日本史を世界史の中で見つめ直すという事について、それぞれの膨大な知識、教養から実例をもとに楽しく読める新書です。

 

ですが、ぼくがこのブログで書きたいのは、お二人のまえがきとあとがきについて。

読んでもらうのが手っ取り早いと思いますので、引用します。まず、出口治明さんのまえがきから、

 半藤先生は想像した通りの穏やかで素晴らしいお人柄でしたが、感動したのは座談会のテーマについて事前に用意された細かいメモをもって臨まれたことでした。手ぶらでのほほんと出かけた自分が恥ずかしくなりました。 

一見、微笑ましい失敗談の類。話の枕にちょうどいい柔らかさですが、半藤一利さんのあとがきを読むと、その印象は一変します。

わたくしはメモというよりちょっとくわしく歴史的事実を書きとめた覚書をもってのぞんだのですが、出口さんはどのときもまったくの手ぶらであった(中略)それで本書に見られるように、あらゆるテーマに対して尽きせぬ泉から滾々と溢れでる清水のごとくに話をされた 

ここまでを読んで、まったく笑いが出ました。出口さんが「手ぶらでのほほんと出かけた 」というのも一面の事実ですが、一方で半藤さんが見た光景というのは、まさに覚書もなく「滾々と溢れでる清水」のように話をされる出口さんの姿だったのです。一冊の本を読んで、今までと世界が変わって見える、という経験は一度や二度、ぼくの短い人生の中で確かにあったことだと信じていますが、この新書では、端的にその有様が再現されていて、これだけで読んだ甲斐があったと思います。

また、これこそがこの本を世に出した価値でもあるでしょう。恐らく、計算されたものだと思いますが、歴史とは正しくこのように見なければならないものだ、と教えられているようで、とてもむずがゆいですね。

見方が変われば、解釈もおのずと変わっていく。言葉としては理解していても、体験することはあまり多くないものですから、これはいい本です。

 

毎週の楽しみも三回目の六月の金曜日